薄暗い廊下、無人のショッピングモール、どこまでも続く階段…。そこはまるで現実と非現実の境界線に存在する不思議な空間。リミナルスペース(Liminal Space)とバックルーム(Backrooms)は、私たちの心に不安と好奇心を同時に呼び起こします。
リミナルスペース(Liminal Space)
リミナルスペース(Liminal Space)という言葉は、ラテン語の「limen(閾、しきい)」に由来し、人類学者アーノルド・ヴァン・ジェネップが1909年に提唱した概念です。元々は通過儀礼における中間的な状態を指していましたが、現代では物理的な空間にも適用されるようになりました。
バックルーム(Backrooms)
出典:Wikipedia
一方、バックルーム(Backrooms)は2019年に4chanの/x/板で投稿された画像とそれに付随する物語から生まれたインターネットクリープパスタ(怖い話)です。「現実からはみ出した」無限の空間という概念が、オンラインコミュニティで急速に広まりました。
日本のリミナルスペース:身近に潜む不思議な空間
日本にも、リミナルスペースと呼べる場所が数多く存在します。以下はその具体例です:
- 地下鉄の通路:東京メトロの新宿駅や大手町駅の長く続く地下通路
- 廃墟となった遊園地:静岡県の富士急ハイランドにある「戸川オートランド」跡地
- 深夜の高速道路のサービスエリア:東名高速道路の海老名サービスエリアなど
- 閉店後の大型商業施設:イオンモールや大丸などの閉店直後の空間
- 使われなくなった学校施設:少子化により閉校となった小中学校の校舎
- 深夜の公園:東京の代々木公園や上野公園など、夜間の広大な公共空間
- 古い温泉旅館の廊下:草津温泉や別府温泉などの古い旅館の夜間の廊下
- 空港の早朝や深夜:成田国際空港や羽田空港の人気のない時間帯
- 深夜の駅構内:東京駅や新宿駅など、終電後・始発前の大規模駅
これらの場所は、日常的でありながら特定の時間や状況下で非日常的な雰囲気を醸し出し、リミナルスペース特有の不思議な感覚を体験させてくれます。ただし、これらの場所を体験する際は、安全性と合法性に十分注意を払う必要があります。
リミナルスペースとは:現実と非現実の狭間
リミナルスペース(Liminal Space)とは、「閾(しきい)の空間」を意味します。現実と非現実、既知と未知の狭間に存在する、一時的で曖昧な空間を指します。日常的な場所でありながら、何か「違和感」を感じさせる空間です。
リミナルスペースの特徴
- 日常的でありながら、どこか非日常的な雰囲気
- 時間が止まったような感覚
- 人の気配がほとんどない
- 無機質で均一的なデザイン
- 方向感覚を失いやすい
バックルームとは:リミナルスペースの極限
バックルーム(Backrooms)は、リミナルスペースの概念をさらに押し進めた、インターネット上のクリープパスタ(怖い話)から生まれた架空の空間です。現実世界から「はみ出した」場所とされ、より不気味で非現実的な要素が強調されています。
バックルームとリミナルスペースの違い
特徴 | リミナルスペース | バックルーム |
---|---|---|
現実性 | 現実世界に存在 | 架空の存在 |
雰囲気 | 違和感のある日常 | 非現実的 |
危険性 | 心理的不安 | 物理的な危険 |
範囲 | 限定的な空間 | 無限の可能性 |
なぜリミナルスペースは怖いのか:心理学的考察
リミナルスペースが私たちに不安や恐怖を感じさせる理由には、いくつかの心理学的要因が関係しています。
1. 認知的不協和
リミナルスペースは、私たちの脳が「通常」と認識している環境から逸脱しています。この認知の不一致が、不安や違和感を引き起こします。
2. 孤独感と脆弱性
人気のない空間は、私たちに深い孤独感をもたらします。同時に、誰も助けてくれる人がいないという脆弱性も感じさせます。
3. 時間感覚の喪失
リミナルスペースでは、時間の流れが通常と異なって感じられます。この時間感覚の歪みが、不安を増幅させます。
4. 未知への恐怖
見慣れた要素がありながらも、何か「違う」と感じさせるリミナルスペース。この未知の要素が、私たちの原始的な恐怖本能を刺激します。
リミナルスペースへの「行き方」:現実世界での体験
リミナルスペースは、実は身近に存在しています。以下のような場所で、リミナルスペース的な体験ができる可能性があります。
- 深夜の空港や駅
- 閉店後のショッピングモール
- 使われなくなった学校や病院
- 長い地下通路や歩道橋
- 人気のない公園や遊園地
注意: これらの場所への無断侵入は違法行為となる可能性があります。安全と合法性を確保した上で体験することが重要です。
バックルームの「行き方」:想像の世界への没入
バックルームは架空の概念ですが、以下のような方法で疑似体験することができます。
- バックルームをテーマにしたゲームやVR体験
- バックルームに関する小説や短編の読書
- バックルームをモチーフにした芸術作品の鑑賞
- 瞑想やイメージトレーニングによる想像体験
リミナルスペースとバックルームの魅力:考察
不安や恐怖を感じさせるにもかかわらず、なぜ人々はリミナルスペースやバックルームに惹かれるのでしょうか。
1. 日常からの解放
非日常的な空間は、私たちを日常の束縛から解き放ち、新鮮な体験を提供します。
2. 想像力の刺激
曖昧で不確定な要素が多いこれらの空間は、私たちの想像力を大いに刺激します。
3. スリルの追求
controlled fearと呼ばれる、安全な環境での恐怖体験は、スリルと興奮をもたらします。
4. 存在の再認識
非日常的な空間での体験は、私たちに自身の存在や現実世界の価値を再認識させます。
まとめ:境界線の魅力と恐怖
リミナルスペースとバックルームは、私たちに現実と非現実の境界線を意識させる不思議な概念です。それらが喚起する不安や恐怖は、実は私たちの内なる好奇心や冒険心の現れかもしれません。
これらの概念を通じて、私たちは日常の中に潜む非日常を発見し、想像力を広げることができます。同時に、現実世界の確かさや人とのつながりの大切さを再認識する機会にもなるでしょう。
リミナルスペースやバックルームの探求は、自己と現実の関係性を問い直す、創造的で刺激的な体験となるはずです。ぜひ、安全に配慮しながら、この不思議な世界への旅を楽しんでみてください。
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